Fukushima Nuclear Disaster

 福島原子力災害を経た原子力のあり方

原発再稼働の問題

福島事故の真摯な原因究明がされないまま、天然ガス輸入量が増えてことを理由に、原発の再稼働が進行しつつある。この機会に、日本の原子力政策がかかえる諸問題を考える。

 

原子力規制委員会による再稼働審査では地震、津波、火山噴火などの自然災害に対する対応が主な審査項目となっている。福島第一原子力発電所で起きた原子力災害の主要な原因が地震とそれに伴った津波という自然災害であったことは確かである。しかし、自然災害に責任を負わせて、人災の諸問題を棚上げにした再稼働は早計である。

 

今回、私が考えるキイワードは以下の6点である。

福島事故の教訓を真摯に受け止める

再稼働を申請する電力会社が事故の教訓を自分達の原発の問題として真摯に受け止め、対応をしているとは、私には思えない。規制委員会が要求する新基準を満足すれば必要にして十分と言うほど原子力安全は単純ではない。

 

Fukushima Unit 3
図1 福島第一原子力発電所3号機の写真
朝日新聞 2011.3.30撮影

 

原発に関わる条件は炉型、経過年数、システム、立地条件など多種多様である。それぞれの原発について弱点を再検討し、弱点をできるだけ少なくする対応がなければ安全性を高めることは難しい。

 

福島事故発生後に複数の事故調査委員会が関係者へのヒアリングを行い、事故の原因と経緯を調査し、その成果を公開した。原子力安・全保安院が解体され原子力規制委員会が発足した。表向きの動きはここで終わったようだ。電力会社が何をどう改善したのかが私には見えない。

 

自然災害への対応以外の安全強化はほとんど報道されていない。もし、安全対策を強化した事項があるならば、電力会社は、それを積極的に広報すればよい。広報されないとき、周知したい改善がないと受け止められても仕方がない。例えば、東京電力のホームページを開くと、「廃炉プロジェクト」という大項目は目に付くが、「再稼働」に関する大項目は見あたらない。

 

原発縮減のロードマップ

安陪政権は原発縮減を政策に掲げた。そうならば、どのような道筋で原発を少なくするのか、どれくらいの年数をかけてどこまで減らすのかを明らかにするロードマップを国民に示すべきである。現在までの動きを見る限り、原発縮減は選挙民へのリップサービスであり、現状維持が本音ではないか。

 

原子力発電については、今すぐ原発稼働をゼロとする主張から、原子力を今よりも増やす主張まで幅が広い。幅の広い主張分布の中で、合理的な縮減案を提示して欲しい。それができないならば、原発縮減政策は虚偽公約と受け止められる。

 

当然のことながら、エネルギー政策の全体像の中で原子力の位置を明示しなければならない。発電に占める原子力の割合および一次エネルギーに占める原子力の割合が年とともにどのように減少するのかを示すべきである。あいまいな議論で済ませ、問題を先送りしてはいけない。

 

余剰プルトニウム

ウラン核燃料を原子力発電に使用すると副産物としてプルトニウムが生まれる。プルトニウムはウラン235と同様な核的性質を持ち、核燃料として機能する。さらに、プルトニウムは核兵器の原料にもなる。

 

日本は使用済核燃料をフランスやイギリスで再処理してもらい、プルトニウムが日本に送り返されている。これが余剰プルトニウムであり、現時点で約40トンあるとのこと。単純計算で原爆5000〜8000発に相当する量である。諸外国は核兵器転用が可能なプルトニウムを日本が大量に保有することに神経を尖らせている。そのため、日本は余剰プルトニウムを長期的にどうするのかを明らかにしなければならない。

 

プルトニウムが核燃料として消費するために、プルトニウムをウラン燃料に混ぜてMOX核燃料が製造される。まず初めに、ウラン燃料の一部だけをMOX燃料に置き換えたMOX炉が登場した。国内の数基がMOX炉であり、福島第一の3号機がMOX炉であった。

 

MOX燃料だけで稼働するフルMOX炉が青森県の大間で建設中。フルMOXで100万kW発電を1年間すると、1.1トン程度が消費される。従って、大間原発を除いた現存する原子炉の全てでMOX燃料を部分的に使用する場合、40トンを使い切るまでに100年くらいはかかる計算。大間フルMOX炉1基だけでは30〜40年がかかる。

 

Ooma Full MOX

図2 大間フルMOX炉の建設現場 J-Power

 

余剰プルトニウムは幾つかの同位体から構成されるが、およそ半分はプルトニウム239である。プルトニウム239はウラン235に比べて、核分裂しやすく、発生する中性子の個数が多い。そのため、ウラン燃料と比べてMOX燃料では核反応の緊急ブレーキとなる制御棒の効きが悪いとの懸念がある。

 

それにしても、何故、40トンものプルトニウムを貯めてしまったのか?
さらに再処理工場を稼働させることは正気の沙汰とは思えない。

 

再処理工場を稼働してはいけない

2014年に策定されたエネルギー基本計画では核燃料サイクルを推進するために青森県六カ所村に建設された原子核燃料再処理工場の稼働が明示された。再処理とは使用済核燃料に含まれるプルトニウムを分離し、それを再利用するために使用済核燃料を化学処理することを指す。

 

再処理工場は2001年に完成した。その後の試運転を始めた。しかし、種々のトラブルが発生し、2015年1月の時点でも放射性廃棄物を混ぜた試料を用いたアクティブ試験の途中であり、本格的な稼働に至っていない。残念ながらトラブルの真相は公表されていない。最大処理能力は800トン/年。プルトニウムが約8トン/年分離される予定であった。

 

Rokkasho Saishori
図3 六カ所再処理工場 ウィキペディア より転載

 

原発縮減を目指すならば、余剰プルトニウムをできるだけ減らすべきである。今以上にプルトニウムを貯めることは縮減政策に反する。高速増殖炉「もんじゅ」を含めた核燃料サイクルというシナリオが破綻した状況の下で再処理工場を稼働させてはいけない。不要な放射性廃棄物が増えるだけである。

 

建設費用は当初7600億円であった。それが年を追って増加し、2011年には2.2兆円に膨らんだ。2015年1月の時点ではもっと増えているはず。科学的かつ産業的に意味を失った施設に税金を注ぎ続けることは大変悲しい。問題の先送りである。

 

集中立地を止める

福島事故の教訓の一つは集中立地の危険性であった。この危険性を事故調査委員会の吉田調書の中で、故吉田所長が述べている。福島第一発電所では6基の原子炉が同時に危機に見舞われた。これへの対処は一個人の能力を超えてしまった。

 

では、独りのリーダーが指揮できる原子炉の最大数は幾つであろうか。福島第二では4基の原子炉が原子力災害をかろうじて免れた事実から、最大数を4と仮定しよう。余裕を持って対処することを仮定するならば2基かもしれない。

 

東京電力の柏崎刈羽発電所には7基の原子炉がある。これは明らかに異常。もし最大数を4とするならば、柏崎刈羽は内部を2系統に分離するとよい。所長が2名、免震重要棟も2棟。あるいは、古い原子炉は廃止し、精鋭を4基に絞って残す。これくらいの改革があっても良いと思う。

 

Kashiwazaki Kariha

図4 柏崎刈羽原子力発電所の衛星写真

上側に3基、下側に4基の原発が見える
Google マップより転載


日本は地震・火山帯にある

地球の大きな構造はプレートテクトニクス理論で理解されている。地球を覆う大きなプレートが日本列島に沿って動いており、プレート境界では巨大地震が起き、火山が噴火する。要するに、日本列島は非常に不安定な地殻の上にある。

M9〜M8クラスのプレート境界型地震は数百年〜数千年の間隔で起きるであろう。これに加えて、断層が動いて起きる地震もある。火山噴火もある。富士山でさえ時々噴火する。世界には約400基の原子炉があるが、地震帯の上にある原子炉は日本を除けば非常に少ない。

 

Sekai Shinngen Bunpu
図5 世界の震源分布
文部科学省 地震調査推進本部 地震動予測地図

 

要するに日本は原発の立地には大変不利な位置にある。米国カルフォルニア南部にあるサンオノフレ原発は蒸気発生器の不具合をきっかけに、地震帯に位置することも理由に加えて、2基の原子炉の廃炉を2013年に決定した。

 

参考資料

福島第一原子力発電所の写真2011.3.30
asahi.com(朝日新聞社):福島第一原発事故(1) - 写真特集
http://www.asahi.com/photonews/gallery/fukushimagenpatsu/
大間原子力発電所の建設計画 J-Power
http://www.jpower.co.jp/bs/field/gensiryoku/project/index.html
六カ所再処理工場 ウィキペディア
http://ja.wikipedia.org/wiki/六ヶ所再処理工場
プレートテクトニクス
http://ja.wikipedia.org/wiki/プレートテクトニクス

ウラン燃料とMOX燃料の比較 J-Power
http://www.jpower.co.jp/bs/field/gensiryoku/project/

aspect/mox/comparison_output/

核データ JENDL-4
http://wwwndc.jaea.go.jp/jendl/j40/J40_J.html
サンオノフレ原発
http://en.wikipedia.org/wiki/San_Onofre_Nuclear_Generating_Station
世界の震源分布
文部科学省 地震調査推進本部 地震動予測地図
http://www.jishin.go.jp/main/p_hyoka04.htm


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