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難民受入要求のデモ

2017.03.30

 

インターネットのニュースを見て我が目を疑った。ドイツ語で書かれていたので、最初は自分の読み間違いかと思ったが、そうではなかった。それは、難民を受け入れることを要求するデモであった。

 

バルセロナのデモ

ドイツの主要新聞Zeitのオンライン版(2017年2月10日、参考資料1)に出ていた記事である。スペイン第2の都市バルセロナにおいて警察発表による参加者数が16万人のデモがあり、人々が要求したことは、難民を受け入れるために国境の門戸を開けることであった。

 

バルセロナの人口は160万人であり、この数は神戸市の人口とほぼ同じである。人口の10分の1の人が、神戸市の面積の1/5しかない街でデモを行ったことになる。私の想像をはるかに超える数の人々がデモに参加した。その混雑ぶりは図1の写真を見ると分かる。

 

Barcelona
図1 バルセロナ中心を埋める16万人デモ
http://www.zeit.de/politik/ausland/2017-02/barcelona-demonstration-fluechtlinge-spanien-mittelmeerより転載

 

国の経済がデフォルトに陥る恐れのあるスペインで、経済的な困難を招くにも関わらず、難民を受け入れる意志を示す人々が多数いる。隣国のフランスでは、難民のせいでテロが起きたから難民・移民を排斥する動きがあるにも関わらず。

 

スペインは、2004年3月にマドリードで列車が爆破され191人が死亡するテロを経験している。

 

日本では

バルセロナ・デモの対極にあるのが日本である。日本が難民として認定する人の数は極めて少ない。年間で二桁である。図2に法務省(参考資料2)が公表した認定者数の推移を示す。悲しいほど少ない。申請者数は年を追って増えており、2016年に1万人を超えた。それでも認定される確率は、百人に一人の1%である。

 

2016年の難民受け入れ数は、日本が28人、ドイツが745,545人である。

 

Nanmin Japan
図2 難民認定者数の推移
http://www.moj.go.jp/content/001217009.pdf より転載

 

基本的に、日本は難民・移民を受け入れる経験が乏しく、大衆の関心は低い。日本人が根強く持つ異邦人排斥、よそ者排斥の感覚が法務省をして難民認定を厳しくさせているようだ。反グロバリゼーションの感覚が強く残っている。日本経済が諸外国との交易で潤っているにも関わらず。

 

難民発生の主な原因はグローバル化した世界の経済活動にあり、貧富の差の拡大を招いている。人口が減少する日本において、難民・移民は貴重な人的資源となる可能性を持っている。

 

武田信玄の言葉「人は城、人は石垣、人は堀、情けは味方、仇は敵なり」を参考にした難民・移民政策が望まれる。

 

ドイツでは

ドイツは第二次世界大戦後の労働力不足を補うためにトルコやイタリアなどから多くのガストアルバイター(移民労働者)を受け入れた。私が1976年から2年間、ドイツに滞在していた頃、ガストアルバイターが、ドイツ人が嫌がるゴミ収集などの3K仕事をこなしていた。

 

その後、東西冷戦終了に伴い、多くの難民・移民が発生し、そうした人々をドイツは受け入れ、難民・移民対策の経験を積んできた。詳しい解説が難民支援協会のHP(参考資料3)に出ている。解説の著者は、ドイツが難民を受け入れる3つの理由を挙げている。

 1.敗戦後に多くの難民を受け入れた歴史‐難民を保護する義務を憲法に
 2.難民受け入れは「恩恵」ではなく「投資」
 3.市民の強い意思と包容力

私は4番目の理由として、「ナチスが行ったホロコーストへの償い」が根底にあると考える。

 

Germany

図3 ドイツの難民受け入れ数

2016年は745,545人
https://www.refugee.or.jp/jar/report/2016/08/26-0000.shtml より転載

 


2015年12月大晦日の深夜、ケルンの中央駅周辺で数百人のドイツ人女性が難民から暴行される事件が発生した。平穏な、摩擦の少ない日本に住んでいる我々には想像することができない深刻な大事件である。当然、難民・移民を排除する声が非常に強くなった。しかし、メルケル首相の強い意志と、国民の支援もあって、ドイツは政治的な困難を乗り切ったと思う。

 

2017年2月にドイツから来日した、生まれも育ちもケルンの友人はケルン事件を話題にしなかった。友人夫妻は、難民・移民はドイツ語を勉強し、子供をドイツの学校へやり、彼らはドイツ人として生きて欲しいと言っていた。トラブルはいっぱい起きているが、ドイツ人として過ごすならば、受け入れるとのこと。

 

友人の話によれば、私が暮らした街に移民・難民用の仮設住宅(?)が建てられた。そこの住民は職がなく暇であり、近隣の街へ行く鉄道は目的のない彼らでいっぱいであるとのこと。盗難が増えたので防犯対策を強化したとも言っていた。

 

それでも、友人は難民・移民を排斥したいとは言わない。

 

参考資料

(1)Zeitオンライン 2017.02.10
http://www.zeit.de/politik/ausland/2017-02/barcelona-demonstration-fluechtlinge-spanien-mittelmeer

 

(2)法務省 平成28年における難民認定者数等について(速報値)
添付資料 別表(1)難民認定申請者数の推移 (2)難民認定者数の推移
http://www.moj.go.jp/content/001217009.pdf

 

(3)難民支援協会
ドイツはなぜ難民を受け入れるのか?政治的リーダーシップと強靭な市民社会
https://www.refugee.or.jp/jar/report/2016/08/26-0000.shtml

 

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