原子力のあり方を考える

 

小泉元総理の「原発ゼロ」発言

2013.10.6

 

小泉元総理が10月1日に名古屋で行った講演において「原発ゼロ」の方針主張しました。その主張は次の2つの理由に基づいています。(1)原子力発電のコストは長期的に見れば安くないこと、(2)放射性廃棄物を長期に管理することが不可能であること。

 

小泉元総理の主張は奇異なものではなく、大変まっとうなものです。原子力を推進する人々は「原子力発電のコストが安い」と言いますが、その根拠は現在までのコストおよび近未来のコストしか考えていないことにあります。すなわち、現在稼働することが可能な原子力発電所の発電コストの主なものはウラン核燃料のコストです。通常の火力発電で燃焼される石油・ガス・石炭などの化石燃料のコストよりは確かに安い。

 

原子力発電所を何らかの理由で運転停止すると、その不足分を通常の火力発電所の稼働によって補うことになります。これによって、化石燃料の費用が発生します。100万kW級の原発を1日停止すると、化石燃料コストが1日あたり1億円になるとのこと。その結果、電力会社は原発のできるだけ早い再稼働を希望します。ただし、ここでのコストは1年程度の短期コストであり、数年〜数十年といった長期のコストではありません。

 

現時点では、残念ながら核のゴミの処分・管理を100年〜1000年にわたり行う長期コストは想定されていません。使用済核燃料の処理・処分については未だに解決策が決まっていません。さらに、廃炉に要するコストも不確定です。それ以前に、使用済核燃料の中間貯蔵すら数年で行き詰まる状態です。

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