原子力のあり方を考える
2013.10.25
福島原発事故を起こした責任者は吉田所長であるという見解はとんでもない誤解です。相当なインテリの人ですら彼を非難することに驚きます。吉田所長がやったことは原子炉事故が発生した後の処置であって、彼の判断ミスが事故を招いた訳ではありません。
原子炉が次々と重大な事態に陥ってゆく中で、しかも非常に劣悪な環境の下で少ない人員を鼓舞しながら冷静に事故に対応した人物が吉田所長です。
海外メディアは、少数精鋭で事故に対応している吉田チームをFukushima50として報道しました。これは海外からの彼らに対する賞賛です。実際は50人よりも多かったようですが。
他方、大規模な福島事故に対応するには1000人規模の人員が必要であったという冷静な評価がありました。福島第2では約2000人の作業員の活躍で緊急事態を乗り越えたことと関連するのでしょう。
では、事故原因は何か?事故原因の1つは人災です。それは限られた少数の人の判断ミスではありません。日本が原子力導入を決めた以降に、原子力発電所建設に携わり、運転に関係してきた非常に多くの人々による小さなミスの集合が原因でしょう。過去60年間にあった不作為のミスの蓄積が原因です。これを正すことは不可能に近いほど困難です。
吉田所長は食道ガンのため2011年に福島第1を離れ、2012年には脳出血を起こし、2013年9月に亡くなりました。彼の2つの病気の原因は放射線被ばくではありません。喫煙と飲酒が原因であろうと推察します。
吉田昌郎氏は東京工業大学・原子核工学専攻の修士課程を卒業されました。その頃、私は東京工業大学・原子炉工学研究所の助手をしていました。残念ながら、彼が学生でいた時期、私はドイツに滞在していたため、演習や学生実の場で吉田氏に出会うことはありませんでした。
吉田昌郎氏のご冥福をお祈りします。