原子力のあり方を考える

 

BWRの制御棒の引き抜け事故

2013.11.08

北陸電力の志賀原子力発電所2号機の再稼働が1年以上遅れることがグーグルニュースに出ていました。そこで志賀原発をネットで調べたところ、「臨界事故」の話題に出会いました。1999年に定期検査中の志賀原発1号機で制御棒3本が少し引き抜け、原子炉が臨界になる事故が起きていました。

この事故に関する調査報告書(概要)が2007年4月に原子力安全・保安院から公表されています。


この報告書を見て一番驚いたことは、制御棒引き抜け事故がこれまでに10回も起きていたことです。沸騰水型原子炉(BWR)では、原子炉圧力容器の底部から上方にある核燃料集合体に向かって制御棒が挿入されます。駆動力は水圧です。下から上に向けて挿入する構造のため、水圧を制御するバルブの操作を誤ると制御棒が下方に引き抜けることが起きます。

何と、10回の事故の内、7回は東京電力の原子炉で起きています。普通の概念では、1度事故(失敗)が起きたら同じ事故(失敗)は2度と起こさないように対策を施します。東京電力は何故同じ失敗を繰り返したのでしょうか。

 

観光バスや運送業トラックなどは駐車する際に車止めをタイヤにかませて、バスやトラックが勝手に動かないようにしています。車止めが正しく置かれているかどうかは目で見て確かめることができます。原子炉の場合、挿入された制御棒が引き抜けることを防止するロック機構があってしかるべきです。ロック機構は操作が分かりやすく、ロックの状態が簡単に目で確かめることができるものが必要です。

 

表1 制御棒の引き抜け事故の一覧

(上記の調査報告書から転記)

(格納容器はBWR原子炉格納容器の変遷、原子力安全協会(編)参照)

発生年月
原子炉・号機

格納容器

電力
会社
引抜かれた
制御棒本数
(全制御棒本数)
臨界

有無
1978.11
福島第一 3号機
MARK-1
東京
5 (137)
1979.02
福島第一 5号機
MARK-1
東京
1 (137)
1980.09
福島第一 2号機
MARK-1
東京
1 (137)
1988.07
女 川  1号機
MARK-1
東北
2 (89)
1991.05
浜 岡  3号機
MARK-1改良
中部
3 (185)
1993.06
福島第二 3号機
MARK-2改良
東京
2 (185)
1996.06
柏崎刈羽 6号機
ABWR
東京
4 (205)
1998.02
福島第一 4号機
MARK-1
東京
34 (137)
1999.06
志 賀  1号機
MARK-1
北陸
3 (89)
臨界
2000.04
柏崎刈羽 1号機
MARK-2
東京
2 (185)

 

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