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市場問題の本質は食の文化

2017.07.10

 

はじめに

築地市場の豊洲移転で混乱が起きている。混乱の原因は、食の文化・伝統を置き去りにして、オリンピック、政治問題、環境汚染、経済重視などが重視されていることである。

 

築地から豊洲に魚市場が移転することで失われるものを考えたい。それは、伝統的な魚の食文化である。食文化は金儲けを急ぐ近視眼的なビジネスよりも大切である。しかし、文化・伝統は軽視されやすい。文化や伝統は一度失うと取り返すことが非常に困難である。

 

豊洲移転を指導した人達は食の文化・伝統や水産物の美味しさに鈍感であったと思う。文化や伝統に価値を置くことができる人々に市場計画をリードしてもらいたい。

 

築地市場の歴史

江戸時代から日本橋魚河岸には市場群があった。それらが1935年に築地に移転した。戦後の一時期に米軍のクリーニング工場が置かれたため、土壌は有機溶剤により汚染された。築地市場の老朽化に伴い、新市場が東京ガス工場の跡地の豊洲に建設され、現在に至っている。        

       (参考資料 築地市場-Wikipedia)


築地市場の特長

世界で唯一の大規模な水産物市場である。場内市場と場外市場の2つから構成される。場内市場は水産物の卸売市場である。場外市場には日本橋界隈にあった食文化を支える業種が入っている。

 

 場内市場

  プロによるプロのためであり、一般人は除外される
  良いもの、悪いものの識別ができる目利きが揃っている
  仲買いがセリを通して価格を決める
  高級魚の価格決定で世界をリードする
  NY商品取引所(WIT石油価格の決定)に似た機能をもつ

 

 場外市場

  一般人を対象とする
  水産物を販売する
  水産物を食べさせる
  調理器具などを販売する

 

 魚の食文化

  調理のアイデアでは世界のトップだと思う
  生食から手の込んだ調理法まで多様である
  旬を活かす知恵がある
  産地の特長を活かす

Barcelona

スペイン・ヴァレンシアの市場

豪華な建物

 

 観光資源

  最近は外国人観光客にも人気が高い
  文化とビジネスが融合した世界である

 

 築地

  立地条件が大変恵まれている
  銀座の隣で徒歩圏内にある
  店と客の対話が普通に行われている

 

Tukiji
 
築地場外市場を楽しむ観光客

食文化・伝統

カネで勘定できない、大切なものである
これを失うと、市場が持つ価値が失われる
回復できない損失となる

 

海外には場内と場外がペアになった施設はない
食文化の伝統を守ることの価値を再認識したい


豊洲には場外がない

豊洲に場外を追加するにしても交通の便が悪い

 

築地を再開発すれば、場内と場外のペアが残る
建築は文化・伝統を考慮した魅力あるものにする

 

時代の変化

時代の変化に適応できるグランドデザインが求められる
インターネット、冷凍技術、輸送(空輸)などの進化によって物流が変化しつつある
築地市場を通さないルートが開発され、伸びている

 

汚染

築地 米軍の洗濯工場の跡地であり、有機溶剤(ベンゼン)の汚染
豊洲 東京ガスの工場跡地
石炭からガスを生産する際の有害廃棄物が発生
廃棄物が対策・処理がされずに埋設されている
表土より4m以上深いレベルに埋設されたまま


まとめ

政治、選挙、オリンピックといった短期的な視点から 市場問題を扱ってはいけない。築地市場は場内市場と場外市場がペアで存在する非常にユニークな施設である。これは江戸時代に遡る文化と伝統を担っている。市場の建物というハードウエアから文化・伝統のソフトウエアに関心を移すことを期待する。

 

あとがき

友人と豊洲の汚染問題を話している中で、彼から食文化の視点を教わった。スペインのバルセロナとヴァレンシアを訪れ、両都市の立派な市場を見物したことがきっかけで、市場に関連する考えをまとめてみた。

 

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