社会や音楽etcについて
4月に非常事態宣言が発令され、人々は外出を自粛することが求められました。Stay Homeが合言葉です。4月30日に、外出自粛は5月31日まで延長された。
5月末に向けて感染者数が減少する状況になれば、人々は5月末で非常事態宣言が解除され、自粛から解放されるだろうと期待していると思う。しかし、事はそれほど単純ではない。
ウイルス感染から解放されるためには、感染する可能性・確率が低くならなければならない。そうした状況に至るのは、多くの人がウイルスの抗体を体内に持つ刻である。感染あるいはワクチン接種によって、国民の70%以上が抗体を持つ時までウイルス感染は続く。すなわちコロナ禍の収束はワクチンおよび治療薬の開発にかかっている。多くの製薬会社がワクチンや治療薬の開発に取り組んでいるが、完成時期は不明。最短でも1年半、場合によっては2年かそれ以上先と言われている。
では、ワクチンと治療薬が完成するまで我々はどうするのか?それまでは現在の状態が続くはず。自粛を緩めて感染が増えたら自粛を強化する。感染が小康状態になれば自粛を緩める。恐らく、強化と緩和を繰り返すのではないか。
図1 感染の増加と減少 |
自粛を緩めるとしても、医療体制が崩壊しないレベルに感染を抑えることが必要である。医療崩壊が起きない条件とは、病院のベッドに十分な空きあること、例えば病床占有率が70%以下に収まること。しかもマスク、防護服、フェイスシールド、手袋など医療に携わる人達の安全を護る装備が確保できていること。
医療関係者が十分な休養を取るためのローテーションに余裕があること。関係者に超過勤務を強いている状態はいけない。休暇も自由に取れること。ドイツのメルケル首相が演説で述べたように、医療関係者や困難に出会った人々を癒すものは芸術である。美術、音楽、映画、演劇など芸術を鑑賞できる心の余裕が要る。さもなければ長期戦に耐えることは不可能である。
経済活動の増減は自粛のさじ加減で調整されると考える。その際、人命すなわち感染状況のコントロールが経済よりも優先されなければならない。
1年から2年、もしくは3年先に収束するのか。1年以内の短期収束の可能性はゼロである。
コロナウイルス感染が何時収束するのかは、現時点では誰も知らない。収束状態の判断は国内人口の大多数が感染したかどうかで決まる。その際の前提は、従来の感染症で経験したこと同じように、一度感染したら再感染をしないことである。
しかし、中国では新型コロナウイルスに感染し、治療を受けた結果、陰性になった人が再び陽性になる例が起きている。要するに、一度陰性になり、抗体ができたとしても再度感染する可能性がある。事実であれば困ったことである。
新型コロナウイルスの発現は不明である。在来のコロナウイルスが突然変異して新型が生まれたとのであろう。新型ウイルスをコウモリが持つに至った経緯も不明である(筆者が知らないだけですが)。
しかし、コウモリがコロナウイルスを持ち、コウモリが他の動物(例 サンゼンコウ)に感染させたと言われている。アフリカでエボラ熱が発生した時、コウモリと密接して生息していたゴリラ群が全滅したことが観察された(200428-山極寿一)。その時、生き残ったのは1頭のオスのゴリラだけであった。オスは群に入らず単独行動するからである。ゴリラが渡ることができない川の対岸に生息していたゴリラ群に感染はなかったとのこと。
中国の武漢では野生動物を食べる習慣があるそうだ。野生動物はどこかでコウモリと接触してウイルス感染した可能性が高い。感染した野生動物を食べた人間が感染した。これが現時点の理解である。コウモリから野生動物(サンゼンコウ)を経てヒトへの感染が起きた。
別の推論は、トランプ大統領が主張するもので、武漢にあるウイルス器研究所からコロナウイルスが漏れ出したとする。信憑性はないが。武漢ウイルス研究所の研究者が、新型コロナウイルスがコウモリ由来であることを論文発表しているとのこと。
ウイルスは細菌よりも微小で、細胞を持たないので生物ではない。しかし遺伝子を持つ。ウイルスは人体内の細胞に侵入する能力を持ち、細胞分裂を経て増殖する。ウイルスは微小(ナノメートルサイズ)であり、光学顕微鏡では観察できず、電子顕微鏡なら観察できる。電子顕微鏡の画像は白黒(モノクロ)であるため、テレビで見るカラー画像は人の作業(塗り絵)で色を付けたものである。
感染防止を強化するということは他人と接触せず、会わず、物に触れないことである。これを強化することは経済活動を妨げる。感染防止と経済活動は反比例する。上手い折り合いをつけなければならない。
コロナ禍が数年続くとするならば、そうした事態に備えることが求められる。医療崩壊を防ぐ観点から考える。
これまで、医療装備の多くは輸入に頼っていた。国内生産による自給率は低かった。例えば、マスクの国内生産率は20%であり、残りの80%は海外からの輸入であった。この低い自給率が災いして、1月末には店頭からマスクが姿を消した。その後、中国からのマスク輸入が途絶えた。単純計算をすれば、国内生産を最低5倍に増やさなければ需要に追いつくことは不可能である。それにも関わらず、政府は掛け声(要望)だけで国内生産を進めることをしなかった。この状態は現在も続いている。
マスク以外の医療装備品でも同じことが起きている。手袋、フェイスマスク、作業着などが不足している。これらの消耗品を輸入に頼っている限り、医療崩危機は今後も続く。生産に必要な原材料の確保も必要である。上記の装備品を早急に国内生産できる体制を作らなければコロナ危機を乗り越えることはできない。
医療装備のサプライチェーンを構築しなければ長期戦に臨むことはできない。
ここでも政府の責任は重大である。現状は、あらゆる所で後手後手になっている。不名誉を挽回して欲しい。
武漢でのパンデミックを収束させた中国は外国から新たにウイルスが侵入することを防ぐために海外からの入国を禁止している。鎖国である。中国と同様に感染拡大を収めた台湾や韓国も同様であろう。日本も海外の多くの国からの入国を制限しており、鎖国に近い。
感染拡大を収めて鎖国した国なら新たな感染者は出ないはず。しかし、海外から人を入れなければグローバル経済活動に参加できない。ワクチン接種が完了するまで外国人を入れないのだろうか。鎖国はいつの日か解除しなければならない。これは中国に限らず日本にもあてはまる。
当分の間、我々は江戸時代の生活を余儀なくされる。海外からの観光客は来ない。日本人が海外へ旅行することもない。江戸時代は300年であったが、コロナ鎖国の期間は何年か?
日本の国家財政は大赤字であり、GDPの2倍の1000兆円を超えている。大判振る舞いの赤字財政を続けた結果である。財政は既に破綻していると考える。それとも、突然、経済が拡大して、年収の2倍の借金を返済できる夢を見ているのか?
大赤字 皆んなで出せば 怖く無い
コロナ禍によって種々の業種で仕事が蒸発した。多くの人が収入を減らし、解雇された人も増えている。経済的に困った人々を国は救済しなければ日本国は崩壊する。一時的な10万円の給付金で済むはずがない。
経済破綻した国は国民を救済したくても資金源がない。無い袖は振れない国になっている。国の指導者達は現在および近未来について明快なビジョンを示すことができていない。昭和時代の思考から抜け出せていない。
山極寿一 「新たな経済秩序、国際関係、暮らし方の早急な模索を」
毎日新聞 2020年4月28日