社会を観察して感じたこと

 

特殊な日本


日本の国内だけに通用する社会現象が幾つかあります。太平洋の中で大陸から隔絶したガラパゴス島の中だけで進化をとげた生物になぞらえて、そうした現象を「ガラパゴス化」と言う。


両替

成田空港で日本円から外国通貨に両替をしようとすると、銀行窓口に置いてある両替申請書に円から外貨に幾ら幾らの両替をしたいので許可してくださいと、金額、氏名を記入した後、外貨を手に入れることができる。外国通貨への両替が政府により管理されている。これは、日本が貧乏で外貨(=米ドル)を準備することが需要であった時代に意味があった制度である。多数の日本人が海外へ出かけ、同様に大勢の外国人が来日する現在、過去の遺物とも言える制度を堅持する日本は大変特殊な国と言ってもよいだろう。

欧米では、両替とは、外国通貨という小売商品の販売という感覚である。空港に限らず町中の銀行や両替商にて簡単に現地通貨を買うことができる。小売り故に、仕入れ価格に利潤を上乗せした価格で通貨を売買する。

成田空港で経験した面白いこと。確か三菱銀行で円から米ドルへの両替であったと記憶する。例によって、両替申請書を提出すると、入口で案内をする人が「米ドルならばこの機械でやれば手続きが早くて良いですよ」と教えてくれました。自動外貨両替機に希望する米ドル金額(記憶では百ドル単位)を入力する。当日の交換レートから割り出されて日本円の金額が表示される。受け取る紙幣は1000円札、5000円札、1万円札のみ。日本円円を入れると、米ドルと釣銭が出てくる。ここで驚いたのは、出てきた米ドルが新札で、しかも連番。まるで自動両替機の中で米ドルを印刷し、その新札が出てきたのかと思いました。


海外の銀行カードからのキャッシング

海外からの旅行者が自国の銀行カードを使ってATMから日本円を引きだそうとすると,これが東京都内ですらほとんどできないのが現状です。丸の内界隈の限られた銀行支店のみで引き出せるようです。日本の銀行のシステムは国内しか有効でないのです。こんな状態で観光立国を目指すことができるのでしょうか。

我が家では、海外で現地通貨を引き出すための目的で、CITI Bankに口座を作り、利用しています。欧米では、街のあちらこちらにATMがあり、そこから現地通貨をこまめに引き出すことができます。ビルの外壁に取り付けられてATMが多く、引き出した現金を簡単に盗まれることを心配します。


外国為替報道

普通の人々が両替をすることが不便な社会であるにも関わらず、TVのニュース、特にNHK TVニュースでは日に何回も外国為替レート、すなわち、1米ドルが何円かを報道します。しかし、1ユーロが何円かを報道することは希です。ましてや、中国元や韓国ウォンについてはほとんどなし。これも異様です。刻々と変化する外国為替レートに敏感なのは専門家であり、そのような人々はTVニュースでなくインターネットから情報を得ると思います。


○ ×の記号

物事の良否を表現するとき、我々は良い場合を○で、悪い場合を×で表します。何かがダメな場合、2本の腕を×状にクロスさせるボディラングイッジがあります。また、良い時は、手の親指と人差し指で○を作ります。あるいは、紙の上やPowerPointスライドの中で○×記号を使います。しかし、これらの意味、すなわち○はgood、×はbadという意味は欧米では理解されない。


日本で発達した表

申請書や報告書に数値を比較するために表が用いられます。日本の表は独特です。恐らく官庁が主導したものと想像しますが、記入欄が縦横に複雑に細分化されます。ExcelやWordに登場するセルがりますが、このセルが細分化される訳です。欧米文化では、表はマトリックスの形をとり、シンプルに何行×何列で表現されます。20年ほど前までワードプロセッサーとしてWordPerfectを使っていました。このWPには日本式の作表機能がなくて困ったことを思いだします。今はMac版のMS-Wordを使っていますが、それでも官庁や事務組織が要求する表を作るときに、困ることがあります。


車内では携帯電話使用を控える

電車、バスでは携帯電話の車内での使用を遠慮しろとか、優先席付近ではマナーモードにしろとのアナウンスが頻繁に流される。この警告の背景は、心臓にペースメーカーを入れている人への配慮です。電話器が発する微弱電波がペースメーカーの働きを妨害すると言う心配です。周波数の高いデジタル信号を扱う電子機器が雑音電波を発することは確かです。

しかし、最近は雑音電磁波の発生を抑えるように回路配線を工夫しており、昔のレベルよりはずっと改善されているはずです。知り合いのベンチャー企業社長の弁では、携帯電話回路(実際の幾何学的配線図)を入力すると、それが発生する電磁波強度を計算するプログラムがあり、そのプログラムによって儲けているとのことです。

私が経験したことは、PCで作業をしているときに胸ポケットに入れた携帯電話に着信があり、マナーモードのバイブレーターが動作すると、CRT画面がゆがむことでした。電話器のマナーモードが作動する前に、PC画面の揺れで着信が分かりました。しかし、現在は液晶画面を使用するため、そうしたことは起こりません。電車の優先席付近で携帯電話亜をマナーモードに設定していると、着信時の雑音電磁波はマナーモードOFF時の雑音電磁波よりも強いと想像されます。

心臓ペースメーカーを入れている人は携帯電話を利用することができないかと問えば、利用できています。旧同僚が数年前にペースメーカーを入れましたが、携帯電話を頻繁に利用しています。心臓から数cm離せばOKとのこと。

携帯電話による音声通話はいけないが、携帯メールやゲームはOKと解釈している人が多く、特に女性が熱心に携帯電話画面に集中している場合をよく見かけます。通勤電車内の僅かな時間も無駄にせず、携帯メールに1秒でも早く応答することに汲々としている姿を見ると、違和感を覚えます。

欧米では人々は電車内で堂々と携帯電話で通話しているのを目にします。
日本の社会は些細な事に神経質すぎます。


外国の携帯電話が日本で使えない

2008年夏に日本に来たドイツ人が日本では携帯電話が使えなとこぼしていました。ドイツで使用する携帯電話は多くの国で利用できるので、日本などの限られた国で利用できないとのこと。この件を2009年春にドコモショップで話したところ、昨年まで確かに外国製の携帯電話が日本国内で利用できないように制限をかけていましたが、2009年1月から制限が解除されたとの説明でした。

しかし、2010年9月の時点でも、相変わらずドイツから持ち込んだ最新の携帯電話が日本で使用できません。携帯通信各社が自分達が販売する機器だけが通信できるようにSIMロックをかけているせいです。これは、電波規格が原因ではなく、単なる排除のための制限だったのです。とんでもない対応です。観光立国の国策が泣きます。

次に、携帯から海外への発信。これも2009年までは、海外へ発信することを識別する4桁の番号0033が必要でした。こんな無駄な、日常使わない番号を記憶できる人がいるでしょうか。0033が解除され、海外発信が携帯と固定電話で共通になりましたが、それでも異常な制約が残っています。KDDI経由ならば海外通話を示す0010をまず入力し、続けて国番号を入力しなければなりません。もし、他の国際電話サービスを使用するときは、その電話会社が指定する複数桁番号を入力しなければなりません。

外国から日本へ電話するときは、固定電話でも携帯電話でも0081の国番号に続けて国内電話番号を入れるだけで繋がります。いつになれば、00**の国番号だけで日本から海外へ発信することができるのでしょうか。

 

 

社会を観察して感じたこと