原子力、エネルギー、放射線についての解説

 

放射線測定の方法

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モニタリングデータ

放射線量を測定した結果のデータは、新聞、NHK-TV、文科省ホームページなどで公表されている。少なくとも、毎日新聞朝刊には全国各地の測定数値が掲載されている。それにも関わらず、もっと詳しく自分が関係する地域の放射線量を知りたいという人が沢山いる。

 

私のところには知人から、自分で放射線測定をしたいから、どのような測定器をどこで買うことができるか教えて欲しいとの問い合わせが寄せられる。測定器は決して安くないのも関わらず、自分で安心するために購入を希望する人は多いようである。

 

しかし、残念ながら国産の放射線測定器の在庫は出払っており、秋以降でなければ購入することができないとのこと。そこで、知人には、測定ポイントは数が少ないけれども、そのデータから自分が関係する地域の放射線量を大まかに類推することを薦めている。

 

上記の文科省ホームページ(http://www.mext.go.jp/)には東電がまとめた原発周辺のモニタリング結果が公開されている。測定データは毎日更新されている。関心のある方はデータを参照して欲しい。

 

空間線量測定

この測定は比較的簡単である。測定原理を問わず、マイクロシーベルトまたはマイクロシーベルト/時の単位で測定値が表示される放射線測定器を準備すればよい。測定器はポータブルであり、電池で駆動される。地表あるいは人体の高さ、室内外を問わず好きな場所の放射線量を得ることができる。

 

本Webサイトの「線量測定」で示す測定データは簡便な個人線量計を用いて測定されたものである。表示される数値が蓄積線量(マイクロシーベルト)であるため、数時間〜数10時間の測定の後、読み取った値を測定時間で割って線量率(マイクロシーベルト/時)を求めた。


ちなみに、この個人線量計の放射線センサーは半導体で作られており、放射線作業をする際に胸ポケットに装着し被ばく線量を測定するものである。

 

線量測定器の例

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個人線量計
センサーは半導体素子
放射線作業のとき着用する

 電離箱式線量計
 放射線が空気を電離した量を測定する
 線量計測の原理に基づいている

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 シンチレーション式サーベイメータ
 センサーはNaIシンチレータ
 ガンマ線を高感度で検出する
 GM式サーベイメータ
 センサーはガイガー計数管
 汚染検査に有効で、線量測定にも有効

 

放射性同位元素の特定

線量測定よりは難しい。放射能の元である放射性同位元素が何であるかの特定をする。各々の放射性同位元素には人間の指紋に相当する特徴がある。それは放射線の種類とエネルギーである。放射線別に測定されたエネルギー値を原子核データブックに載っている数値と比べることによって放射性同位元素を特定する。

 

例えば、セシウム137の場合、セシウム137に固有なエネルギーをもったガンマ線が放射される。ガンマ線のエネルギーを精度よく測定することにより、サンプルにセシウム137が含まれているかどうかが分かる。


ヨウ素131はセシウム137とは異なるエネルギーのガンマ線を放出するので、ヨウ素137とセシウム137を区別することは簡単である。
この測定にはゲルマニウム半導体検出器、測定回路、波高分析器などが必要であり、高価である。

 

ベータ線しか放出しない放射性同位元素に対してはベータ線の測定をしなければならない。この測定は上のガンマ線測定の場合とは異なる測定器が必要であり、ガンマ線測定よりも面倒である。残念ながら、筆者はベータ線のエネルギー分析をした経験がない。

 

アルファ線の測定はさらに難しい。アルファ線は数cmの厚さの大気で止まるほど物質との相互作用が強い。そのため、サンプルと検出器を真空の中に入れてアルファ線を測定することになる。エネルギー分析の方法はガンマ線の場合と同じ。例として、プルトニウムの分析がある。

 

食品中・水中の放射能濃度測定

筆者はこの測定の経験がない。測定サンプルの重量1kgあたりに含まれる数百〜数千ベクレルの微量な放射能量を求めるには、バックグラウンド放射線を遮蔽する特別な設備が必要である。ガンマ線のエネルギーを精密に測定することが可能なゲルマニウム半導体検出器が使用される。

セシウム137あるはヨウ素131の場合、ガンマ線測定で得られた強度値をガンマ線放出量に換算し、放射能量を決める。この数値をサンプル重量で割れば放射能濃度が得られる。

 

食品や水に含まれる放射能の濃度を測定する場合、放射能量が微量であるため、放射線測定に要する時間が長くなる。恐らく30分程度は必要であろう。このため、放射能分析を専門とする分析センターでさえも、1日に分析することが可能なサンプル数はそんなに多くはないと想像する。従って、学校のプールの水を毎日採取し、それに含まれる放射能量を分析することは現実的ではない。

 

ストロンチウム90はベータ線と極微量のガンマ線を放出する。ベータ線の測定から放射性同位元素(放射性物質)を決めることは、ガンマ線分析から放射性同位元素を決定することよりも難しい。もし、ストロンチウム90のガンマ線が検出された場合、高い放射能濃度となるはずである。

 

プルトニウム分析

核燃料を原子炉内で燃焼するとプルトニウムが生成される。MOX燃料には核燃焼する前からプルトニウムが含まれている。原子力発電原子炉は数ヶ月以上の長い期間にわたって運転されるため、プルトニウム239に加えてプルトニウム240も生成される。他方、核兵器用のプルトニウムはプルトニウム239の純度が高く、プルトニウム240は少ない。


そこで、アルファ線のエネルギーと強度を測定することができれば、プルトニウム239とプルトニウム240の比率が決まり、プルトニウムが原発由来か核兵器由来かを決めることができる。
福島第1原発の近くの土壌サンプルを分析した結果、極微量のプルトニウムが検出され、測定データは原発由来を示しているとの報道があった。

 

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