福島事故に関する提言

 

原子力技術情報の継承

 

日本国内にある全ての原発を今直ぐ運転停止に持ち込むことは非現実的である。原子力を代替するエネルギー源がしかるべき水準になるまでは原発を維持することが必要である。脱原発あるいは減原発の政策をとる場合、今後10年〜20年の間は好むと好まざるに関わらず原発を運転することになる。

 

最後まで運転されていた原発が役目を終えた後も、使用済み核燃料の後始末が残る。運転が終わった原子炉を解体する廃炉措置がある。廃棄物の管理は半永久的に継続されなければならない。

 

原子力発電所の運転ばかりでなく廃炉措置や廃棄物処理処分にも原子力に関する技術情報を的確に継承することが大変重要である。例えば、使用済み燃料を扱う際には再臨界を防ぐ措置が必須であるが、この臨界管理に関するノウハウを後継者や次世代に的確に継承しなければならない。

 

負の遺産

原子力発電を止めた後でも、技術情報の継承を真面目にやらなければならないことは大変なことである。負の遺産を管理するために高度な教育を継続し優秀な人材を確保しなければならない。それには費用もかさむ。しかも、その期間は半永久的である。何ともつらい話しである。

 

技術情報を組織的に継続するための仕組みを作り、その政策が継続されなければならない。脱原発、減原発の政策を実施する場合、技術情報継承を忘れてはいけない。国際原子力機関(IAEA)は技術情報の継承に力を入れており、日本の今後について注目しているはず。

 

失敗例

技術情報の継承に失敗した例がチェルブイリ事故である。制御棒が特殊な構造をしており低出力運転をした後に制御棒を挿入することの危険性が事故時の運転員に継承されていなかった。運転マニュアルには危険性が書かれていたとのこと。しかし、何故危険であるのかという論理的なことは教育されていなかったと思われる。

 

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