社会や音楽etcについて

 

KSな人々対KNな人

2016.07.21

 

2016年7月の参議院選挙や最近の社会現象を見聞すると、日本の社会では相変わらず空気を読むことで物事が決定されているのだ、と言う思いが強くなりました。空気を読むことによる判断が2016.04.03に取り上げた「YKKな人々」の問題と共通している。共通点は日本社会の未来に暗い影を落としそうなことである。

 

記号の定義

  KS 空気に支配される
  KY 空気が読めない
  KN 空気に流されない
  YKK 読まない、書かない、考えない
  notYKK 読む、書く、考える

 

3分の2って何?

高知新聞記者が7月2〜4日、高知市内で「今回の参院選は『3分の2』という数字が注目されています。さて何のことでしょうか?」と町を歩く100人に聞いてみた。

  全く知らない人は83人
  知っている人は17人

調査をした記者が、関心が薄いと思われそうな人を意識的に選んだのかもしれない。聞き取りのサンブル数が100人と少ない。などの理由で信ぴょう性は低いかもしれないが。
(毎日新聞 2016.07.13 https://l.mainichi.jp/NldyG)

http://mainichi.jp/articles/20160713/dde/012/070/010000c?fm=mnm

 

高知市民の知的水準が格別に低いわけではなく、首都圏も含めて、一般市民の政治への関心度は上記の程度であろう。YKKな人々は新聞の政治・社会面を読まないか、そもそも新聞を購読していない。TVを見ても、ニュース・報道の番組を見ないのであろう。

 

いくら安倍政権が参院選で『改憲』の言葉を封印していたとしても、新聞やTVは最低限の情報を流していた。要するに、上記の現象は、YKKな人々が日本の未来を想像することに興味をほとんど持たないことを示している。

 

公明党議席数が9から14に躍進

公明党は議席数を改選前の9から14に増加させた。公明党には支持団体としての創価学会がある。創価学会は宗教団体である。創価学会の信者が組織票として公明党に投票することは理解することができる。

 

しかし、9から14への躍進は、創価学会の会員でない一般の人々の投票がなければあり得ない話である。しかも、その数は相当なものである。公明党と創価学会の関係は堂々と公開されているのだが。

この不思議な、私にとって理解できない現象を説明するとしたら、以下のものになる。非学会員で公明党に投票した人は、公明党の基盤が宗教団体の創価学会であることを知らない人々である。このようなYKKな人々は公明党にとっては大歓迎であろう。

 

シャープ、東芝、三菱自動車

日本の一流企業であったシャープ、東芝、三菱自動車の凋落を見ることは大変寂しい。シャープは何を造るべきかという戦略でミスを犯した。東芝と三菱自動車は経営判断に加えて、粉飾決算あるいは排ガス測定不正という法令遵守でもミスを犯している。何故そうなったのか?

 

私の想像するところでは、KSな人々、すなわち社内の空気に支配される人々が多い組織が出来上がっていたのではないか。そうした組織で空気の流れに水を差す発言をすることは勇気を必要とする。合理的な判断に基づいて空気の流れに逆らうことができるKNな対応が出来るサムライがいなかったようだ。

KSな人々が間違った方向に流れている時に、KNな人が間違いを正すことが許される組織は強いと思う。KNな人は貴重であるのに、そうした人は冷遇されやすい。

 

私が在職した大学での経験によれば、会議は枝葉末節な事項になると議論が賑やかになる。そうなった場面を制して別の大事な話題に移る発言をするKNな人は少ない。物事を多方面から見ることができ、他の人々とは異なった提案をすることができる人は少ないが、貴重である。

 

KNなサムライ

女川原子力発電所が助かった理由」のページで勇気あるサムライであった平井弥之助氏を紹介している。ご覧になっていただければ幸いである。

 

歴史にIFはないけれども、もし、東京電力に平井氏のようなサムライがいて、福島第一原子力発電所の建設を指揮していたら、福島原子力災害を防ぐことができたかもしれない。

 

イノベーション

イノベーションとは新しいものを取り入れること、新しいものを生み出すことを指す。他人が考えついたことを真似することではない。他人が考えつかなかったことを考えつくことである。

 

周りの人に同調する思考に支配されているKSな人々がイノベーションを起こすことは難しい。よく勉強し、自ら考えるnotYKKな人で、かつ、KNな人がイノベーションを起こすことができそうである。他人の真似を拒否し、自分でwhatを考えることができる人。

 

notYKKで、KNな、whatを考えることができる人材をどうやったら育成することができるのか? 残念ながら私は答えを知らない。

 

カリキュラムに沿った教育ではダメであろう。notYKKやKNは持って生まれた能力かもしれない。周囲に適切な刺激を与える人、支援してくれる人が居ること。人生のどこかで偉大な能力を持った人に出会い、そこから刺激を受けること。言ってみれば、偶然の出会いが大きな要素かもしれない。

 

安倍政権は経済成長戦略が重要であり、そのためにイノベーションを推進したいと言う。言葉としてイノベーションをブチあげることは簡単である。しかし、イノベーションを実現したことがない人がイノベーションを口にするとき、その言葉は単なる願望にしか過ぎない。

 

参考資料

「空気」の研究、山本七平著 文春文庫 初版1983年

 

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