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米貿易赤字・ミスリードな新聞記事

2017.03.02

 

2017年2月に米国の貿易赤字が主要なメディアによって報道された。民放TVの解説は良かったが、主要新聞の報道が¥は人々に誤解を与えるミスリードなものであった。重要なポイントを書かず、枝葉末節な解説を引用することで終わっていた。

 

TV報道

2月上旬に民放TVを見ていたら、米国の貿易赤字が解説されていた。そこでは、図1の国別割合を表す円グラフを示しながら解説をしていた。貿易赤字の47%を中国が占めることを第一に挙げ、問題点を分かりやすく説明していた。

 

図1 米国貿易赤字の国別割合

(BIGLOBEニュースから転載、
https://news.biglobe.ne.jp/economy/0207/kyo_170207_8961042708.html)

 

図1から、私が読み取ったことは以下の3点である。

 

(1)貿易赤字の約半分は中国との貿易から発生している。米国が貿易赤字を縮小あるいは解消したいならば、対中国の貿易を改善しなければならない。

 

(2)日本、ドイツ、メキシコとの貿易から発生する赤字の割合は合計しても30%ほどである。対中国の巨大な赤字の重要さに比べて、日本、ドイツ、メキシコの3国間のわずかな差を細かく分析する意味は小さい。差が小さいので、順位の入れ替わりはいつでも起こり得る。

 

(3)対日本の貿易赤字割合順位が2位であることを強調して、騒ぐことは問題の本質を見失わせる。

 

新聞報道

2017年2月8日付の主要新聞の見出しは「米貿易赤字 2位日本」であった。内容は、前年からの増減、3位ドイツとの差異、それらの変化が起きた原因など、事細かである。その反対に、国別割合の円グラフを示さず、1位中国の割合数値に触れていない。

 

玄人らしい記述で一見格好いいが、一番大事なことを指摘していない。このような報道から、読者は起きていることが何であるのかを理解することは難しい。少なくとも、私には理解・想像することができなかった。

 

(主要新聞の例:2017.02.08の産経、日経、毎日、読売)

 

BIGLOBEニュース

インターネットに登場するBIGLOBEニュース2017.02.08は簡潔な解説であるが、上記の国別話割合のグラフおよび米貿易赤字額の推移グラフ(2000年から2016年)を載せている。ニュースソースが共同通信であることが明示されている。

 

これならば、米国の貿易赤字についての大事な点を読み取ることができる。本質を見失う恐れがない。

それでも、1位中国の割合が47%と半分近くを占める点を強調する文面ではないが。

 

(参照:https://news.biglobe.ne.jp/economy/0207/kyo_170207_8961042708.html)
(参照:共同通信 https://this.kiji.is/201698803812646919?c=110564226228225532)

 

結論

ニュースソースが海外にある場合、新聞社は記事を通信社から買って、自社の新聞に掲載するであろう。購入・掲載は仕方がない。けれども、担当者がその記事内容に疑問を感じたら、何らかの対応をすることを期待したい。

 

米貿易赤字の国別割合のデータを、例えば共同通信から購入した場合、データやグラフを基にして、自社の解説を読者のために作り、それを新聞紙面に載せて欲しいと思う。

 

参考資料・毎日新聞記事

私は毎日新聞を購読している。その関係で主要な記事を、ネットワークを通して読むことができる。毎日新聞の関係者には申し訳ないが、参考資料として2017.02.08付記事のテキストを転載する。他紙の報道も似たりよったりである。

 

貿易収支
貿易赤字で日本2位 0.4%増 16年

毎日新聞2017年2月7日 23時20分(最終更新 2月8日 00時37分)
【ワシントン清水憲司】

 

米商務省が7日発表した2016年の貿易統計によると、貿易赤字は5023億ドル(季節調整済み)と、前年比0.4%増加した。国別の貿易赤字は、日本が中国に次ぐ2位に浮上。トランプ米大統領は貿易赤字の削減を目指しており、日本に対する態度が厳しくなることも予想される。

 

輸出額は2.3%減の2兆2094億ドル、輸入は1.8%減の2兆7117億ドルだった。貿易赤字の国内総生産(GDP)比は2.7%となり、前年から0.1ポイント低下した。


モノの取引に限った貿易相手国別の赤字額は、中国が5.5%減の3470億ドルと最も多かった。日本は前年から横ばいの689億ドルだったが、13.3%減と大きく減少したドイツ(649億ドル)を上回り、2位になった。4位のメキシコは4.2%増の632億ドルだった。


トランプ政権は「貿易赤字削減が経済成長につながる」と訴え、ダンピング(不当廉売)などの取り締まりを強化するほか、2国間の通商交渉を通じて自国に有利な条件を引き出すことを狙っている。


(転載資料のURL:https://l.mainichi.jp/cKvIrp あるいは  http://mainichi.jp/articles/20170208/k00/00m/020/181000c?fm=mnm)

 

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