原子力、エネルギー、放射線についての解説

 

稼働中原子炉内のウランと使用済燃料はどちらが危険か

 

地震が起きた時に、稼働中の原子炉内にある核燃料と使用済核燃料では、どちらの方が危険であるのか?と言う質問を友人から受けました。

 

その答えは、[稼働中の原子炉内にある核燃料の方が使用済核燃料よりも圧倒的に危険度が高い]。

 

Fuel Asembly

Spent Fuel

電気事業連合会の資料より

http://www.fepc.or.jp/enterprise/

hatsuden/nuclear/nenryoushuugoutai/

sw_index_01/index.html

使用済み核燃料 Wikipediaより

http://ja.wikipedia.org/wiki/

使用済み核燃料

 

福島第1原子力発電所1号機の場合を考える

電気出力46万kWで運転されていました。その時の熱出力は約3倍の138万 kWでした。地震の揺れを感知した瞬間に制御棒(緊急ブレーキ)が挿入され、2〜3秒で 挿入が完了しました。


この時点で核分裂連鎖反応の99%が停止し、遅発中性子による核分裂反応もゆっくりと減少し、10分後には事実上、核分裂反応は停止した。138万kWの発熱の93%は瞬時に消え、残りの7%は核燃料が発生する崩壊熱です。

 

これは核分裂で発生した核分裂生成物(放射性原子核)の崩壊に伴う崩壊熱です。具体的にはベータ線とガンマ線のエネルギーが熱に変わったものです。核分裂生成物の多くは半減期が短く、停止後の数時間から10時間の間に崩壊熱は急速に1/10程度まで減少し、その後はゆっくりと減少します。

 

この段階で核燃料は使用済核燃料と言うことができます。とは言っても、発熱量は約1万kWもあり、しっかりと冷却をしな いと核燃料の温度は上昇し、危険な状態になります。温度は発熱と冷却のバランスで決まるからです。

 

福島第1原子力発電所1号機では、停止後に冷却ができたのは最初の1時間だけであり、3月11日の夕方ごろには燃料棒が水面から顔を出していたものと考えられます。その後は、冷却水が足されることもなく、裸の空だき状態となり、メルトダウンに至ったと想像します。

 

他方、4号機の場合、4階の貯蔵プールに沢山(1535体の燃料集合体、およそ260トンの燃料)の使用済燃料があり、冷却が十分にできず深刻な問題となりました。もしも、地震によってプールに亀裂が入り、水が抜けたとしたら大変なことになっていました。運良く、貯蔵プールには漏れがなく、隣のプールとの間にある壁が壊れ、そこから水が貯蔵プールに流れ込み、冷却が保たれました。

 

原子力、エネルギー、放射線