原子力、エネルギー、放射線についての解説

 

鴨川講演でのQ&A

 

鴨川市で7月23日に行った講演会では沢山の質問が寄せられました。質問への個人的な見解を以下にまとめました。

 

1 雨水が集まるところの土壌

もし、放射性物質に汚染された雨が降れば、雨水が集まるところの土壌に含まれる放射能濃度は高くなると考えられます。幸い、鴨川ではそうした事が起きていないようです。

 

2 雨が降った後の水(水道)や北風による放射線の影響を知りたい

3月の時点では北風によって放射性物質が鴨川方面に運ばれ、雨が降ると放射性物質が地表に落ちてくる可能性がありました。しかし、7月〜8月の時点では水素爆発が再度起きる可能性が低くなっています。その結果、雨が降った後でも、北風が吹いても新たな放射能汚染が鴨川に起きる可能性は低いと考えます。
 

3 今後の野菜、魚、米、果物等は大丈夫なのか

鴨川で採れる野菜、米、果物は大丈夫と思います。その理由は、地表の放射線量が低く、放射性セシウムによって地表が汚染されている可能性が低いからです。勿論、正確を期するためには土壌に含まれる放射能の分析が必要です。しかし、現在は分析センターに測定の依頼が殺到しており、詳しい汚染状況の測定には時間がかかるでしょう。
鴨川で水揚げされる魚についても放射能測定が必要です。汚染物質はまずコウナゴのような小さな魚に集まり、それを食べる大きな魚に移ってゆきます。いわゆる食物連鎖です。大きな魚に放射性物質が集まるには時間がかかります。1〜2年程度の長期間の追跡調査が必要でしょう。

 

4 雨、北からの風(強風)等は大丈夫なのか

質問2を参照してください。
 

5 今年は安心してとは言っても放射能汚染されている訳でこの秋にとれるお米が心配です。 細かい測定を希望します。

鴨川産のお米が放射能汚染されているのかどうかは確かに心配です。鴨川市内の数カ所で地表の放射線量を測定しましたが、高い数値は出ていません。そのため、個人的には汚染の可能性は低いとみています。米の放射能測定がされるとの報道がありますので、測定結果を早く知りたいと思います。
 

6 なぜ、技術的なことを政治的に利用するのか

今回の原発事故の原因は技術的な面を十分に検討することを怠り、安全対策が十分でなかったことでした。そうした事を政治の駆け引きに利用することに対して、私も残念に思っています。
 

7 放射線よりもくさらないバナナ・キウイetc輸入農産物の農薬・防腐剤が常々心配です

私も同感です。放射線や放射能を心配するとき、農薬や防腐剤などにも気をつけることが大切です。
 

8 鴨川では空気・海・水道・プール・土とも心配ないデータが公表されているのに、それでもなお、イベントの都度測定するのは無駄だと思うのですが、市民の不安解消のためには必要なのでしょうか?

不安感は理屈を越えたところにあります。その不安感を少しでも和らげるためならば、放射線測定の機会を増やすことに異存はありません。ただし、信頼できる測定器を用いて放射線を測定していただきたい。
 

9 今後鴨川で水揚げされる魚を食べ続けるので、魚に蓄積される事が心配だ

魚の放射能汚染は確かに心配です。 3の質問を参考にしてください。

 

10 長い時間の外作業について、今迄同様にして良いのか。特に毎日砂にまみれてサッカーをしている、東京の孫が心配です

鴨川に限らず、大気中の放射線量が低い地域は放射能汚染を心配しなくて良いと考えます。そうした地域では、外での作業も今まで同様でよく、子供達も心配せずに外で沢山遊ぶことが良いでしょう。

 

11 まわりくどい。福島と程度の差こそあれ、危機感、緊張感を持って日々、鴨川で生活するお母さんたちもいるのに、その気持ちに応えている内容だったのでしょうか。一般論、一般情報は手に入ります。鴨川を十分内容にもりこんだ講演がききたかったです。内部被ばくの話がもっとききたかった。

福島県の放射能汚染された地域と比べれば、鴨川は顕著な汚染がない正常な地域です。恵まれた地域である鴨川に住むお母さん達が放射線だけでなく、それ以外の種々の危険因子にも気を配られることを期待します。
なお、内部被ばくが健康に及ぼす影響に関する実験や観測は多くありません。チェルノブイリ事故では内部被ばくも含めた放射線影響が調査されています。内部被ばくの場合、外部被ばくでは問題とされなかったアルファ線、ベータ線の影響が大きくなります。
 

12A 静岡県産のお茶から放射線物質が検出されたようですが本当に福島原発の影響なのかどうか知りたいと思います。本日の資料で鴨川では大気中線量にほとんど影響がないのになぜ静岡茶から放射線が検出されるのか?

放射性セシウムは福島原発から出たものに間違いありません。NHK-TVでの解説によれば、放射性のセシウム137を含んだプルーム(雲のようなもの)が福島原発から出て、各地の上空を通り過ぎた。それが神奈川や静岡にたどり着いたときに気象条件が変わり、セシウム137を含んだプルームが地上に下りて来た。3月15日と3月21日の2度、プルームが東京を通過したそうです。
 

12B もともとお茶という植物は放射線物質をとり込み易い植物なのではないですか
宇治やその他九州産のお茶等も測ったら出るのではないですか
もしそうだとしたら人間は何千年もお茶を飲んできた訳ですが

放射性物質を選択的に取り込む植物があるとは考えられません。自然に存在するセシウム元素は安定であり、放射性ではありません。お茶はセシウム元素を取り込む性質があり、そのため放射性セシウムを取り込んだようです。
放射性セシウムを載せたプルームは静岡県に漂着しましたが、宇治や九州に漂着したという報告はありません。従って、宇治や九州のお茶は放射性セシウムに汚染されていません。 
 

13 子どもへの影響(今日は一般的な(大人をメインにした)被爆なので)

子ども、幼児、乳児、胎児の順に成長が速く、細胞分裂が短い時間間隔で起きています。そのため、小さな子どもは大人に比べて放射線の影響を受けやすくなっています。妊娠中にX線撮影を避ける理由と同じです。小さな子どもの放射線に対する感受性は大人の数倍大きいと聞いたことがあります。成長するにつれて大人と同じ感受性に近づきます。
そこで、感受性が数倍大きいとするならば、放射線によるリスクを小さくするために、1年間の被ばく線量を大人の数分の1に押さえることが目標になると考えます。
ただし、子どもが微量でも被ばくすると障害がいつか必ず発生する訳ではありません。ほとんどの場合、障害は発生しません。しかし、障害発生のリスク(確率)はゼロではありません。この事情を理解し受け入れることが難しく、不安を引き起こす理由になっています。
 

14 葉物は良く洗ってといいますが汚染された水で洗ってないか?土についても上の方を取り除いた土はどこに処理して良いか

2011年8月時点の水道水には放射性物質が検出されていません。したがって、水道水で洗えば大丈夫です。通常の場合、取り除いた土は今までとおりの処理で良いでしょう。
もしも、高濃度の放射能で汚染されている土であることが分かっている場合には、取り除いた土をプラスチック袋に入れて、汚染物が入っていることを表示し、保存します。その後、行政と処理方法について相談することになります。
 

15A 食べ物に含まれる放射能がゼロというものはないようなので、最後は食べ物の摂取は、これが絶対と自分の判断によるようでむずかしい。

放射能ゼロを要求すると無理が出ます。これまで普通に食べていた食べ物なら心配せずに安心して食べ続けてください。
 

15B 水道水の放射線の定期的な検査結果を広報等で知りたい

鴨川市のホームページに水道水の定期的な検査結果が出ています。身近な人にインターネットを介して検査結果を見てもらうことを頼んでください。
 

16 放射線物質の@体内被ばくを極力防止するにはどうするかA対外へ効率よく排泄?する方法はあるのでしょうか

@ 放射性物質に汚染された物を食べないこと、土壌が汚染された地域ではマスクを付けることです。
A 放射性物質を積極的に対外に排出する方法はありません。強いて言えば、お茶やビールなどを沢山飲み、オシッコを沢山排出することでしょう。
従って、放射能を排出する薬は全てインチキです。
 

17 今の鴨川の状況は、普通の生活は心配ないということで良いのでしょうか?

はい、普通の生活に心配はありません。
 

18 食品の安全

食品に含まれる放射能の測定が種々の食品に対して行われることが求められます。測定結果が迅速に分かりやすく公表されることが大切です。この件は消費者庁が担当しています。
食品の安全を考えるとき、放射能以外の要素にも気を配ることが大切です。
 

19 テロとかミサイルにあったらどのくらい広がるのでしょう

テロの場合は予想が難しいと思います。例えば、東京の繁華街に放射性物質をまき散らすと、大勢の人が被ばくし、放射能汚染も拡がります。。
ミサイルで原子力発電所が破壊された場合は福島原発事故と同様な事態になるものと考えます。
 

20 ポジティブに放射能とつき合うには?放射線にはむやみに手を出さないとは具体的には?

放射線の性質をよく理解し、放射線の人体への影響の理屈を理解したうえで、放射線をあなどらず、かつ過度に神経質にならないことです。
一般の人が放射線に手をだすことは考えられません。その意味で、今までとおりの生活で良いでしょう。
 

21 ロシア・アメリカの原発事故の後の被爆した人体がどの様にえいきょうしているかのデータが知りたい

私の手元に残念ながら具体的なデータはありません。具体的な情報はインターネットに多数出ていますので、インターネットで検索されることを薦めます。

アメリカのスリーマイルアイランド原発の事故では、放射性物質はほとんど外部に放出されませんでした。周辺住民の被ばくもなかったはずです。ただし、原発作業員は被ばくしたことでしょう。

チェルノブイリ原発事故では多くの住民が被ばくしました。甲状腺ガンの発症が多数出ました。しかし、発症数が西欧の知見に比べて異常に多いため、放射性ヨウ素だけが原因ではなく何か別の地域的な要素が関係しているのではないかとの見方があります。海から遠い地域に住む人々に固有な何かがあるのかもしれません。他方、放射線によって甲状腺ガンが多数発生したとして放射線影響を強調する見方もあります。

 

22 放射線量はいつになったら通常に戻るのですか

今現在では雨にぬれても大丈夫ですか

鴨川に限れば、放射線量は通常のレベルです。
福島県やホットスポット地点は半減期が30年のセシウム137やストロンチウム90で汚染されていると考えられます。そのため、何も処置をしないならば通常に戻るには非常に長い年数がかかります。そうした場所は汚染物質を除去する除染作業をしない限り、生活に適した環境になりません。
今は大気中に放射性物質がほとんど放出されていないので、雨に濡れても大丈夫です。
 

23 鼻血が出るという症状がネットを見ているとよくありますが、因果関係があるのではないかと思っております。何かご存知でしたらお教え下さい。

放射線の影響による症状として鼻血が出るという報告はありません。しかし、放射線被ばくによる精神的な負荷、あるいは過剰労働による疲労が原因で鼻血が出たのかもしれません。放射線による間接的な影響として鼻血を考えることができます。
 

24 《鴨川市への要望》今後も鴨川および千葉の定期的な検査と発表をしてほしい。子供の給食の食材の産地の内訳を知らせてほしい 海草、貝、海中の土

水道水を毎週検査した結果は鴨川市のホームページに出ています。
鴨川と成田の空間線量が毎日測定され、その結果が千葉県放射線技師会のホームページに出ています。http://www.cart.or.jp/public_html/temp/survey.pdf
海水に漏洩した放射性物質による海草、貝、海中の土、魚などの汚染については、今後の検査結果が待たれます。数年にわたる地道な測定が必要です。
給食食材の産地に関するご要望は鴨川市に伝えます。
 

25A 県の発表の数値が低く、民間・マスコミ等がガイガーカウンターで測定した数値が2〜3倍であるがどちらが正しいのか?

私は県の発表の方が正しいと考えます。放射線検出器には幾つかのタイプがあります。専門家が使用する検出器は、センサーが固体であるシンチレーションカウンターです。これは検出感度が高く、放射線のエネルギーも測定しています。値段も数十万円と大変高価です。
他方、ガイガーカウンターはセンサーが気体であるため、検出感度が低い。しかも簡易測定器の場合、センサーのサイズも小さい。簡易測定器は値段は安いけれども低線量を正しく測定することは不得手です。
 

25B 海水にヨウ素・セシウムは不検出だがストロンチウム等の検査はしなくていいのか。 ハワイ・グアム・アメリカ等でストロンチウムが出ているが日本は検査しなくていいのか?海水(ストロンチウムの測定)、砂浜(海水浴場)

ストロンチウムの検査も必要です。しかし、放射性のストロンチウム90はガンマ線を事実上出さず、ベータ線しか出しません。そのため測定が難しく、そのせいで検査が遅れていると思われます。
 

26 鴨川市にあるスーパーではどうして福島の野菜を売っているのか

私が答えるべき質問ではありません。私の想像は以下のとおりです。
福島産の野菜だから放射性物質によって汚染されているとは限りません。汚染されていない野菜なら販売することに何の問題もありません。恐らく福島県の農家の人々を支援する目的で福島の野菜を売っているのでしょう。
 

27A 鴨川市との放射線リスク(モニタリング)についての対話する機会をセッティングして頂きたい。講演後にセッティングして頂けたら良かったかもしれません。

市役所が休日の土曜日に講演会を開いたため、時間に制約があり、対話することができませんでした。ご要望を鴨川市に伝えます。
 

27B 子供の尿検査(0歳〜中学までの)

体内に放射性物質を取り込んだ心当たりがある場合に尿検査をする意味があります。そうではなくて不安を解消する目的ならば、数名の代表者の尿検査は可能かもしれません。しかし、検査機関には放射性物質に汚染された牛肉、水道水、農産物、魚介類などの検査が殺到しています。検査費用は安くありません。1検体あたり1〜2万円でしょうか。
 

28A  体外排出の方法対策は?

積極的に放射性物質を対外に排出する方法はありません。強いて言えば、お茶やビールなどを沢山飲み、オシッコを沢山排出することでしょうか?
従って、放射能を排出する薬は全てインチキです。
 

28B 放射線と放射性物質の値がどのくらいになったら避難すべきか?

1年間に受ける被ばく線量の推定値によって政府が避難を指示するはずです。個人の判断で避難をするならば、ひとつの目安は1年間の被ばく線量が5ミリシーベルトを越えるときでしょうか。50ミリシーベルトを越えるときは積極的に避難することになります。以上は私の個人的な意見です。
 

28C 放射線物質が含まれていないカリウムはあるのか?

残念ながらありません。天然のカリウムには0.01%ですが放射性のカリウム40が含まれています。
 

28D 含まれているカリウムは人工的につくられたものか?

人工的でなく自然にできたものです。
 

28E 含まれていない土(自然界)はあるのか?

カリウムをほとんど含まない土はあるかもしれません。地熱の大きな部分が放射性カリウムの崩壊熱と言われています。その意味で自然界にある放射性物質は地球の誕生と密接に関係しています。なお、1945年以降は核実験により大気および地表は人工的に放射性物質によって汚染されました。
 

28F 放射線物質と放射線の違い

放射性物質は放射線を放出する原子核を指します。放射性の原子核が異なる原子核に変化する際に放射線が放出されます。放射線は高速で飛び去る微粒子です。
 

28G 安心して子育てする為に 大気・水・給食&食材が心配です(全てになってしまうでしょうか?)

鴨川では大気、水道水、地表は安心してよいでしょう。
給食や家庭で使われる食材では、放射能汚染が測定されていない食材への心配と解釈します。例えば、放射性セシウムに汚染された牛肉は放射能汚染が検出される前に一部が消費者に渡り、消費されました。汚染されているのに測定がされていないために流通している食材が他にもあるのではないか?放射能濃度は規制値以下であっても濃度がゼロでない場合は安全か?等々の疑問が心配の原因となります。
放射能濃度が検出限界以下もしくはゼロでなければ食材として受け入れることができないという立場をとると、食べるものが非常に限定されてしまいます。そうなると栄養バランスが崩れてしまい、健康を維持することが難しくなると思います。私の考えでは、流通している食材ならば放射能のことを気にせず受け入れてかまいません。運悪く食べた後で放射能汚染が発覚しても健康障害を心配する必要はないと考えます。食材の安全を考える場合、放射能以外にも農薬、添加物、防腐剤などに注意を払うことが大切です。
 

28H プール・牛乳について、保護者から中止する声があがっているようです。

現在は水道水に放射能が検出されていません。牛乳は放射能検査で合格したものが流通しています。従って、プール・牛乳を中止する合理的な理由が見あたりません。
 

28I 給食については特に、知りたい、どうにかしたくも、できない事ではないでしょうか?

給食であれ、家庭での食事であれ「放射能」という観点からは食材の質は同じです。給食用食材は安価であり、質が悪く、それ故に「放射能」に汚染されている可能性が高いと疑う必然性はありません。給食の食材が高級な食材に比べて美味しくないことはあるかもしれませんが、「放射能」に汚染された食材が横流しされて給食センターに納入されていることはあり得ないと考えます。
食育の観点から、給食においしいもの、味覚を育てるものを提供することは大切ですが、コストの壁があるかもしれません。
 

28J 市民がつながり、声をあげ、行政を含め(行政は情報の開示をし)支えあっていけるとよりよい鴨川市 安心できるまちになるのかと思っています。

賛成です。
 

28K 資料最後のQ&AのAを話してくださるのかと思いました。説明書きがあるとうれしいです。

Q1「直ちに健康に影響することはない」とはどういう意味なのか。

Q2 避難している人たちは何年くらい戻れないのか

Q3 放射線量を測る検査をするのは難しいのか(大気、水道、食品など)

Q4 静岡のお茶は危なくて、東京や千葉など、
福島に近いところのお茶は危なくないのか?

Q5 現在マスコミを通じて20mSv/年の実効線量が問題になっています。この線量を受けること により、何か問題があるのでしょうか?

本Webサイトの「よくある質問 Q&A」をご覧下さい。
 

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