原子力、エネルギー、放射線についての解説

 

自然放射線

 

原子力発電所事故がなくても、我々は自然界に存在する放射線(自然放射線)を毎日被ばくしている。自然放射線の発生源は、宇宙線(遠方の宇宙から地球に飛来するエネルギーの高い粒子線)、地殻に含まれる放射性物質(カリウム40が代表的)、大気中核実験でまき散らされた種々の放射性物質などである。

 

地殻に含まれる放射性物質の種類や量は地域・地質によって異なる。放射性物質を多く含む岩石として代表的なものは花崗岩である。その理由は、花崗岩がカリウム、トリウム、ウランを含んでいるからである。カリウムには放射性のカリウム40が0.01%存在し、トリウムとウランは全て放射性である。そのため、花崗岩が多く分布する地域の線量率は高い。花崗岩については下記の日本地質学会ホームページをご覧ください。

日本地質学会
http://www.geosociety.jp/faq/content0313.html

 

格別、線量率が高いのはラジウム温泉である。その3代表は、秋田県の玉川温泉、山梨県の増富温泉、鳥取県の三朝温泉である。三朝温泉の近くには、かつてウランを採鉱した人形峠がある。10年ほど前に増富温泉に出かけたとき、同僚が浴場に放射線検出器を持ち込んで線量率を測定したところ、検出器は確かに高い値を示した。

 

日本の場合、自然放射線量は地域によるバラツキを均した平均値で年間1.5ミリシーベルトとのこと。世界の平均値は2.4ミリシーベルトである。

 

飛行機に乗って海外旅行をするとき、飛行機は高度1〜1.2万メートルの成層圏を飛行する。成層圏では、空気による宇宙線の遮蔽が少なくなるため、線量率は地表の場合よりも高くなる。あるとき、個人線量計を持参して海外に出かけ、機内で線量を測定した。飛行高度に対応して線量率がはっきりと変化し、まるで線量計が高度計のようであった。

 

原子力、エネルギー、放射線